最近の読書録

9月〜つい最近の読書録をば。
色々ネタバレが酷い可能性があるのと長いので続きを読む記法で。

「ABCの殺人」、「アクロイド殺し」、「オリエント急行の殺人」

隔週ペースでクリスティを読もうと決心したのが先月ですので、順調に三冊来てます。しかし次に何を読もうか悩む。「そして誰もいなくなった」は1〜2年前読んでますし。軽めのが良いのですが。

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

予告殺人系の話。あまり意外性はなかったかも。
アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

当時アンフェアだアンフェアだと騒ぎ立てられた問題の一作。トリックは兎も角として、作中の時間軸の設定と話自体の構成から犯人は分ってしまいますが……そんなに言われるほどアンフェアかなあと思ったりします。推理小説の二十則を作った保守派のヴァン・ダインからすれば許せないものだったのでしょうけど、それに完全に則った推理小説なんてミステリである以上に創作として面白いですかね?自らの限界を設定してしまったらそれに縛られるだけで新しいブレイクスルーなんて生まれないでしょうに。
それはともかく、日本の小説だと「黒猫の三角(asin:406273480X)」なんかがこれに近いよ、とだけ書いておく(こっちのがもっと極端だけど)。
オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アクロイドよりこっちのが余程外道だろというのがまず読んだ感想。正直これは予想できなかった。前情報なしで読めたのが何よりの幸いである。クリスティが凄いのはミステリのトリックが超一流だからというだけではなくて、ストーリー構成もまた超一流であるという点にもあり、これはその一つの極致と言える。その点からするとクリスティのどの作品も明らかに異彩を放っているが、これまで読んだ4作の中ではこれが一番好きだ。

太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

id:shiumachi氏に「夜は短し歩けよ乙女(asin:4048737449)」のことを教えてもらってからちょいと調べてみて興味が湧いてきたので購入。「夜は短し歩けよ乙女」は文庫版待ちということにしておいて(ハードカバー本は学術書以外原則買わない主義なので)、先に文庫化している同著者の「太陽の塔」と「四畳半神話大系」を購入。四畳半のほうは後で読む。
作品の舞台は京都市左京区というか百万遍というかぶっちゃけて言えば京大。そもそも作者が京大OBなので、まあそのあたりのネタが目白押しなわけです。ちなみに一番ツボにはまったのはこの辺。

「もし精神が位置エネルギーを持つとしたら、落下するときにはエネルギーを放出するはずだ。それを利用できればなあ」
我々は人類を救うことになる絶大なエネルギーを想った。挫折、失恋、死に至る病、あらゆる苦悩がエネルギーに変換され、自動車を走らせ、飛行機を飛ばし、インターネットは繋ぎ放題、アイドルビデオは見放題となる。これほど素晴らしい未来はない。そうなれば井戸のように過剰な苦悩を抱える者が人類の救世主として人類の救世主として脚光を浴び、暑苦しいポジティブ人間はまとめてお払い箱である。彼の時代が来るのだ。
「僕はまずそのエネルギーをつかって、鴨川に座ってる男女を焼き払います」

腹筋が痛い。電車の中で読むと酷い目に遭います(といいつつ電車の中で読破しましたが)。
文庫版の太陽の塔は非常にお手ごろな値段なので試金石として読んでみると良いと思います、というのも森見氏の作品は作風(文体、話の書き方)が非常に独特なので、合わない人もいるでしょうから。筒井康隆が許容できるなら大丈夫だと思いますが。ちなみに森見氏ははてなで日記も書かれているようですのでそちらも参考に。
森見氏は農学研究科卒ということで同作ではそっちの方が舞台でしたが、今後桂キャンパスを舞台にした作品を書く工学部出身の作家とかが出てこないかなあ。電気電子出身のミステリ作家ならいるけど桂移転前の卒業生ですし。